【省エネ機器】 地中熱ヒートポンプシステム

地中熱ヒートポンプシステム 地中熱ヒートポンプシステムは、地下水の持つ”水の温もり”を利用し、冷媒と地下水の間で熱交換して冷房や暖房を行う装置です。
 エアコンとして使用すると、従来の空冷式エアコンと比較して、夏場の冷房で電力費を65%以上カット、冬場の暖房で電力費を30%以上カットすることができる画期的なシステムです。

1. 水の温もりとは

 地中深さ10メートルより深い層の温度は、地上の気温変化にかかわりなく、一年を通 して地上の年間平均気温と同じ10 ~15 ℃と一定であり、ここに存在する地下水も、同様に年間を通じて一定温度です。


NPO法人 地中熱利用促進協会パンフレットより

地下水と外気の温度差 地下水温度は、外気温度に比べて冬温かく夏冷たいため、この地下水を冬季の採熱源、夏季の放熱源として利用すれば、年間を通して非常に効率が良い熱エネルギー利用ができます。
 例えば、甲府盆地では、夏場、外気温が30 ℃以上の時、地下水は15 ℃の冷房源となり、冬場、外気温が0 ℃以下の時、地中は15℃の暖房源となります。

2. 地下水利用ヒートポンプシステムとは

 ヒートポンプとは、CO2 やフロンなどの冷媒を圧縮や膨張させ,これにより加温したり冷却したりする装置で、エアコンやエコキュート(給湯機)などに使用されています。これらは、通常空気を熱源としてしています、一方、地下水(熱源)利用ヒートポンプシステムでは、冷媒と地下水の間で熱交換して冷房や暖房を行います。具体的には、図のように空調や給湯を行うものです。

地下水利用ヒートポンプシステム(暖房の場合)

  1. 地下水は純国産のエンドレスな自然エネルギーです。
  2. エアコンとして使用すると、従来の空冷式エアコンと比較して、夏場の冷房で電力費を65%以上カット、冬場の暖房で電力費を30%以上カットすることができます。
  3. 自墳井を利用した場合、ボーリング工事が不要となり、経済的です。
  4. 都市部では、夏場、エアコンの排熱によるヒートアイランド現象が大きな課題です。しかし、地中熱ヒートポンプは、熱を地中に逃がしますので、大気への排熱という熱公害を発生しません。
  5. 給湯に利用すると、安価な夜間電力を利用するため経済的です。

熱源温度と暖房・冷房エネルギー効率(COP)
熱源温度と暖房・冷房エネルギー効率(COP)

 既存のエアコン(空気熱源のヒートポンプ)では、夏場では外気温30℃のときに、30℃の外気を冷房源とし、冬場、外気温0℃のときに、0℃の大気を熱源として熱交換します。一方、地中熱ヒートポンプ(GEO-HP)は15℃の地中を熱源としますので、電力費を夏場65%以上、冬場30%以上削減することができます。

3.導入事例

自噴井を利用した事務所空調の省エネ

 下図は、環境省の実証事業として、中央市の民間企業の事務所に地下水利用ヒートポンプシステムエアコンを設置して、従来の空冷式エアコンと比較実験したものです。

 8月の冷房運転における比較実験では、下表に示す通り、従来の空冷式エアコンと比較して61%の電力削減となり、その飛躍的な省エネ性を実証しました。

比較実験データ(8月冷房時)

4.海外での普及状況と国内の展望

 地下水を含めた地中熱利用は米国・中国・北欧で実用化が進んでおり、一方、国内では、設備容量でこれらの100分の1以下という寂しい状況です。
 しかし、近年、国内でも自然エネルギーや省エネ・節電に関心が集まる中、地下水利用地中熱ヒートポンプシステムは、今後、その省エネ性・経済性により、爆発的に普及することが期待されています。


5.エアコン室外機による排熱・騒音公害を無くす

 近年、都市部では、エアコンの排熱によるヒートアイランド現象が大きな課題となり、また、住宅地では、エアコン室外機による夜間の騒音も問題となっています。しかし、地下水利用ヒートポンプでは、熱を地下水に逃がしますので、室外機のファンによる大気への排熱という熱公害、騒音公害を発生しません。
 図は、従来のエアコン室外機と地下水利用のエアコン室外機の排熱状況を、サーモグラフィーで比較したものです。冷房運転時、従来のエアコンでは、大量に熱風を外気に吹き出しています。一方、地下水利用エアコンでは、室外機内部で少し温度上昇するのみで、排熱公害はほぼゼロであることがわかります。